85人が本棚に入れています
本棚に追加
汐吉は店の電話から沙雪の携帯へ電話をかけた。家にいるかどうかは分からないからだ。
しばしの発信音のあと、彼女の声が聞こえた。
『はい、松浪です』
「ああ、もしもし。喰代だ」
『あ、お疲れ様です! どうしました?』
「どうしたもこうしたもあるか、藤枝さんにうちに行けって言ったんだってな」
『ということは、来てくれたのね、藤枝さん』
全く悪びれることなく、むしろ嬉しそうである。
「そうなんだけど。藤枝さん、ヒナゲシ会に入るって」
『え!? 本当ですか! やったあ!』
「あと俺も」
『……え? もう一回言って』
「ぁあ?」
『幻聴じゃないことを確かめたいのよ、ね、お願い。これまで何回かフェイントされてるし』
「……俺も、ヒナゲシ会に入るって言ってるんだよ」
『まあ!! 蒼早くん、蒼早くん!!』
その大きな声は、若葉にも聞こえるほどだ。思わず二人は苦笑いを浮かべる。年長のはずの沙雪のはしゃぎようが、幼稚園児並みだった。
蒼早の名前を呼んでいるということは、どうやら家にいるらしい。
最初のコメントを投稿しよう!