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『喰代さんがヒナゲシ会に入るって! これで大きく進展したのよ。メンバーは五人になるし!』
電話の前から離れているのか、蒼早に向けての大声が響く。
「……松浪さん、こういう人だから。頼りすぎないように」
「えーと……素直でいいと思いますよ」
沙雪が聞いていないのをいいことに、好き勝手に話す。電話口に彼女が戻ってきたようだ。
『よかったわ、ヒナゲシ会はお二人を歓迎します!』
「どうも。じゃあ近いうちに藤枝さんも連れてそこに行くか」
『そうね、二人の都合のいい日を教えてちょうだい。布瀬さんの件もあるし』
「ああ。……藤枝さん、松浪さんとこにはいつならいける?」
「え? 挨拶くらいなら今日でも大丈夫ですよ」
「お、そうか。……今日、夜は平気か? あー、夕方前には行けるかもしれないけど」
『あら、いいわよ。そっか、お店はお休みなんでしたね。お待ちしてます』
「ああ。じゃ、また後ほど」
『はぁい、よろしくお願いしますね』
明るい挨拶をかわし、電話を切る。
「松浪さん、優しいですよね」
「ちょっと抜けてるけどな。出会いこそすごかったけど、いい人だ」
「出会い?」
若葉のオウム返しな質問に、はたと思い当たる。もうずいぶん前に沙雪と出会った気でいたが、まだここ数週間での出来事だ。厳密にはもっと短い。
「……話してやろうか。俺と松浪さんが会ったときのこと」
「はい、聞きたいです!」
彼女との出会いから、汐吉のその後はだいぶ変わりはじめていた。
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