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第八章 四.
電話を終え、若葉も朝食兼昼食―食べた時間が昼頃だった―を終え、二人は他愛もない話をしていた。いや、正確には、同級生への仕返しの方法だ。
「同じことはしたくないんですよ、同類になりたくないので」
「そう思う時点で勝ってるな」
「本当ですか?」
「ああ、それにわかる。同じになりたくないから違う方向に行くってこと。……藤枝さんって呼びにくいから若葉でもいいか?」
「はい、もちろん! ぼくは汐吉さんって呼んでも?」
「ああ、いいぞ」
そんな和やかな空気は、外から聞こえてきた悲鳴によって壊された。
「きゃあぁああぁああ!」
「!? なんだ……」
王子神社の方から聞こえる、高い声。
「今の、なんですかね」
「……見に行ってくる」
「え、あっ、汐吉さん!」
若葉が呼び止めるのも聞かず、汐吉はそのまま神社へと走っていく。
「えーと、えーと……ぼくがいなくなったら店がもぬけの殻になって何か盗まれちゃうかもだし……」
本当はついていきたいところだが、飛び出そうとしたところで、そのことに気が付く。汐吉にはここにいてほしいといわれたのだし、動かない方がいいのでは、ということで、迷う気持ちのまま、店内に残ることにした。
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