第八章 四.

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「はあ、はあっ、はっ……」  距離はそんなにないが、普段運動をしない汐吉のことなのですぐに疲れてしまう。それでも、完全に息切れする前になんとか鳥居へたどり着く。 「なん……、紅乃!?」 「あ、店長っ……!」  そこには、亜子を抱きかかえる紅乃と、二人の前―本殿側―に立っている巫女服の少女、そして三人をぽかん、とした表情で見つめるカメラを持った女性がいた。 「紅乃、何があった!」  そう言って走り寄ろうとした汐吉は、亜子を見て走るのをやめた。黒い煙が、閉じられた目から出ている。まとっているのではない。“出ている”。 ―こんなのは初めて見るぞ。
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