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「これら東京十社は准勅祭社と呼ばれています。祭祀……、いわばオマツリのようなことをする際に天皇から勅使、使者ともいますが、が遣わされる神社のことを勅祭社といいます」
「東京十社は“准”勅祭社なんでしょう。それはどうしてですか」
「勅祭社は氷川神社になるんですが、その近くにある神社を准勅祭社としたんです。最初は十二ありましたが、今では十となりました。それが、この東京十社です」
勅祭社である氷川神社というのは、埼玉県にある神社だという。近くかというと距離があるような気もするが、そう決められているのだから素人の汐吉が疑問を持ったところで、どうにかなるものではない。
「はあ、なるほど。東京十社についてはよく分かりました。それで、ヒナゲシ会というのは?」
「東京十社、各神社に宮司とは別にウラガミ様がいるのです。その身に神を降ろす者のことでして。それらが集まった組織を“ヒナゲシ会”と呼んでいます」
「民法の話は今はいいです」
法人格の話を出された汐吉の顔は、面倒ごとを避けたそうにやや引きつった。汐吉の最終学歴は大卒であり、いたのは法学部であるため、沙雪の言葉も理解できていた。
「そのヒナゲシ会で、なんでここに?」
「私の職業は写真家で、その傍ら、芝大神宮のウラガミとして務めていますが……、今、六人は足りない状態でして」
つまりは、人手不足ということらしい。
「半分近くいるんだろ? なら俺がやらなくても」
「先程のを見たでしょう。水品さんみたいに、死気……死ぬに気力の気と書きますが、それに乗っ取られる人が増え始めているんです。もう、私含めて四人のウラガミでは足りなくなってきました。喰代さんは、間違いなく“浄化”の能力をお持ちです」
ちらり、と、沙雪の隙を見て自身の右手を見下ろす。なんてことないこの手に、そんな力が?
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