第八章 四.

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「……紅乃、店番を変われ」 「へっ!?」 「カンテラに藤枝若葉っていうやつがいる。そいつにここに来るようにいえ。携帯で松浪さんに連絡とるようにとも」 「え、えっ、でも、亜子ちゃんが」 「いいから行け!! 時間がないんだ!」 「っ……、は、はいっ」  これまで一度も聞いたことのないような―いや、沙雪が店に来た日は聞いたことがある―大声に肩を震わせながらもなんとかうなずく。  亜子をそっと地面に横たわらせると、カンテラのほうへ走っていった。 「明坂さん、ですか。あの二人がどんな言い合いをしていたか覚えていますか」 「えっと、えっと……」  瑞樹は懸命に数分前のことを思い出す。そう、撮影は順調だった。天芽が、亜子にああやって声をかけるまでは。
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