85人が本棚に入れています
本棚に追加
「松浪さん、あの黒いのが見えるか!」
『ええ! 蒼早くんは見える?』
『見えるよ。二人とも死気に憑かれてる、地面の子は重症だ』
蒼早が言っているのは亜子のほうだ。汐吉は意外そうに尋ねる。
「巫女じゃないのか?」
『見た感じ、地面に倒れてる子のほうが色が濃い。目から煙が出てるのも気になるね、そんなの見たことないよ』
やはり蒼早も、亜子の目から黒い煙が出ていることが気になるようだった。しかし、目はまだ閉じられている。赤い瞳かを確かめられない。
「……黒い煙が見えるってことは……、蒼早、能力使えるか」
『目が合えば。できる?』
「やろう。若葉、携帯かしてくれ」
「はい」
蒼早たちと汐吉の会話を真剣に聞いていた彼は、条件反射のように即答して携帯を渡した。
「倒れているのは金崎亜子、という名前の子なんだが、目があけられるか分からない。巫女の天芽っていう子の方からいくぞ」
『了解、なるべく近くね』
「努力する」
『がんばって、喰代さん!』
沙雪のエールも耳に残し、携帯を手に取ると、ゆっくり天芽へ向かって歩き出す。
最初のコメントを投稿しよう!