第九章 一.

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「松浪さん、あの黒いのが見えるか!」 『ええ! 蒼早くんは見える?』 『見えるよ。二人とも死気に憑かれてる、地面の子は重症だ』  蒼早が言っているのは亜子のほうだ。汐吉は意外そうに尋ねる。 「巫女じゃないのか?」 『見た感じ、地面に倒れてる子のほうが色が濃い。目から煙が出てるのも気になるね、そんなの見たことないよ』  やはり蒼早も、亜子の目から黒い煙が出ていることが気になるようだった。しかし、目はまだ閉じられている。赤い瞳かを確かめられない。 「……黒い煙が見えるってことは……、蒼早、能力使えるか」 『目が合えば。できる?』 「やろう。若葉、携帯かしてくれ」 「はい」  蒼早たちと汐吉の会話を真剣に聞いていた彼は、条件反射のように即答して携帯を渡した。 「倒れているのは金崎亜子、という名前の子なんだが、目があけられるか分からない。巫女の天芽っていう子の方からいくぞ」 『了解、なるべく近くね』 「努力する」 『がんばって、喰代さん!』  沙雪のエールも耳に残し、携帯を手に取ると、ゆっくり天芽へ向かって歩き出す。
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