第九章 一.

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「天芽ちゃん、落ち着いて!」 「ヤメテヤメテヤメロヤメロヤメロ!」 「何が何だか分からないけどっ、私のせいなら、私がやらないとっ……」  沙雪よりは力があるようだ。それか、まだ天芽が十六歳だからなんとかなっているのかもしれない。もしくは、抱きしめていないものの、一応は腕の中、ということになるのであろうか。 『藤枝、君はさっきの女の子の方に行って』 「は、はい!」  蒼早に言われた若葉は、携帯を持ったままきょろ、と周囲を見渡す。  一方で、汐吉は瑞樹が天芽を腕の中にとらえている間に、暴れる天芽の頭、顔、首、肩、手……と順番に手をかざしていく。その度に、黒い煙は白色になって消えていった。 「あ……」 「……っ、と!」  浄化をされた後、皆は一様に脱力する。天芽もそうで、力が抜けて倒れこみそうになるのを瑞樹が抱きとめた。
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