第一章 四.

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「死気が憑いてしまった人は瞳の色が変わり、黒い煙を体にまとって暴走します。でも、その状態が見えるのはウラガミ様だけ。だから、先程のも……私たち以外には、ただ女性がふらついているようにしか見えないんです。でも、当の本人は体の制御ができず別人格になってしまい、最悪の場合は殺人をもしてしまう」  汐吉が浄化をしていなければ、水品はそのまま暴走していただろう。店外に様子を見に出たのが紅乃だったらと思うとゾッとした。殺されていたかもしれないのだ。沙雪が追いついたことと、外にいたのが汐吉だったおかげで、水品は無事に解放されたわけだが。 「ヒナゲシ会は先程もいったように法人格はありません。ですが、警視庁からそういう……、妖対策課として公認されており、組織として活動しています。ただ、今いる四人のうち、二人はその……高齢で」  人手不足というのは、それが理由だった。高齢でも動けないことはないが、やはり先は短い。今のうちに引き継ぎもしたいからと、彼らはあまり動こうとしないそうだ。 「もう一人は、ヒナゲシ会に入っていただけるならご紹介しますよ」 「……その、水品さん、という人を、最初からここに連れてくるつもりで?」 「はい。以前から相談を受けていたんです。妹の友人でして、時々記憶がなくなると……、記憶をなくした後、人から避けられるようになったから理由を解明したい、助けてほしい、とのことで。ただ酔って記憶がなくなるとか、その程度ではないらしい、ということでしたから」  よくある死気が憑いたときの初期の症状であることを、沙雪は話を聞いたときに察知したという。 「汐吉さんのことを知って、ヒナゲシ会へお誘いしようと思ってたんです。だから、ちょうどいいと思って……」
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