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「よし、浄化完了。次は……若葉? 若葉!」
「こっちです、汐吉さん!」
手水舎の近くから声がし、そちらを向けば若葉が亜子の上半身を抱えるようにして地面に座っていた。
「目があかないんです、どうしたら……」
「な……、金崎さん、金崎さん! 蒼早、これはどういうことだ?」
『僕にも分からないよ。浄化できるか、手をかざして試してみて』
蒼早にいわれ、うなずいた汐吉は亜子の閉じられた目に手をかざしてみる。
しかし、天芽とは違い、煙は薄くならない。
「ちっ、ダメだ」
『……もしかして、死気を浄化できない状態なんじゃない?』
「手遅れだといいたいのか」
『ちょっと違う。今の状態って、浄化をされたあとの状態に近いんだよね。だから、彼女の中で……死気と彼女の人格が戦っているのかもしれない。沙雪、そうだよね』
『ええ。重症化をしたときは、精神に干渉するそうよ。母から、ある程度死気があらわれたときの症状について教わっていたからわかるわ』
「じゃあどうすればいいんだよ。このままじゃ、この子は……」
紅乃の友人であるというのに。カンテラの常連でもある彼女を助けられないというのか。
やはり自分は無力だ。
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