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『藤枝さん、おかえりなさい』
「は、はぁ……?」
『彼女と話をしたのでしょ? 目を覚ましたということは、死気に彼女の人格が勝ったということよ。あなたが助けたの』
「……ぼくが?」
電話越しに会話をする二人の横で、汐吉は亜子を支えながら起こした。
「金崎さん、俺のことわかるか?」
「……店長さん? あれ、どうして……紅乃ちゃんは」
「あいつはカンテラにいる」
よかった、と胸をなでおろす。亜子を助けられたことに安堵していた。
「……ぼくが、助けた……」
『すごいじゃない、早速死気からその子を守ったのよ。立派なウラガミ様だわ』
沙雪に褒められた若葉は、無言のまま照れたようにふにゃりとほほ笑む。
「そう、か、ぼくが、この人を……」
『亀戸天神社で、会った時にね、言いたかったのよ。藤枝さんは、歌が好きだから、傾聴っていう苦しむ人の声を聞く能力と相性がいいはずだって』
―元から、音楽を聞くのが好きだった。
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