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第九章 三.
『私、蒼早くんと一緒に大きなお家に住んでいるの。部屋はまだあるし、よかったら。それも含めてさ、またお話しましょ』
『……はい』
暗い部屋で、机上の電気だけをつけ、椅子に膝を立てて座っている彼は爪やすりで自身の爪をとぎながらぼやく。
「なあんだ、失敗か」
爪やすりを机の上におくと立ち上がる。イヤホンもついでに外して、床に投げ捨てた。
「死気って操れるんじゃなかったの~? 松ヶ枝は半分成功、半分失敗かな」
顎に手をあてて、壁にはった地図をみる。東京十社があるところに黒丸のマークがついている。
「でもま、洲崎天芽にも死気が憑くことが分かったのはいいかな。でも、喰代汐吉……邪魔だなあ。仕方ない、やっちゃうか」
うん、と誰に対してでもなくつぶやき、うなずいた。
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