第九章 三.

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「二俣くん……? 二俣侑斗くんか? いつもノートパソコンを持っている」 「え? ええ、そうだけど……、なんだ、知り合いなの?」  汐吉はここ数日のことを思い出す。紅乃は不思議そうに首を傾げた。 「どうして明坂さんと二俣さんが?」 「前に仕事をしたことがあってね。私が編集で、二俣くんがライター。そこから情報交換をすることになって、今回は松浪さんっていう人が天芽ちゃんの特集を組みたいからって取材するように言われたのよ。急だったけど、仕事はあるにこしたことないしと思って、都合つけてきたらこうなっちゃった」 ―……松浪?  確かに、“松浪さん”と言った。 「汐吉さん? どうしたんですか」 「いや……、少し気になることがある」 「気になること……ですか」 「ああ」  何のことだか分からない若葉をよそに、汐吉が瑞樹に尋ねる。 「あの、明坂、さんですっけ」 「はい?」
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