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第九章 四.
突然時が止まったかのように動かなくなった汐吉らを見て、瑞樹は困惑したようにきょろきょろと皆の顔を見る。
「何よ、どうしたの」
「わ……私は、見えてない、ですけど……」
紅乃は引きつるように愛想笑いを浮かべ、ぼそぼそと話す。
「そうなの? じゃあ見間違いかしら」
瑞樹の言葉に分かりやすく動揺している者が一名。汐吉だ。
「見間違いじゃない、いや、待って、ちょっと待って。待て」
「そんなに言うなら待つわよ。別に電話すれば上司は待ってくれるし」
「そうじゃなくて……えっ、いつから見えるように?」
「半年前くらいよ」
あっけらかんと話すが、あの黒いのが見えたということは、彼女は“ウラガミ様”だということになる。
死気のことも、ヒナゲシ会のことも、病院に来る途中で話していたというのに。
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