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「さっき、言ったでしょう。洲崎天芽さんのこととか、ヒナゲシ会のこととか」
「ええ。でも、私はウラガミじゃないと思ってたし」
「死気はウラガミにしか見えないんだって何回も言ったはずだが」
「でもさ~、確証がなかったのよ。私はどこにでもいる会社員よ? ウラガミ様って特別だと思うし、ただ単に見えちゃっただけっていうかぁ」
十人いる、ということも説明したはずだが、瑞樹は自身がその中に含まれているとは考えていないようだった。
「……分かった。じゃあ、明坂さん。松浪さんに会いに行きましょう」
「ん? 松浪さん? って、あの松浪さん?」
「そう、二俣くんがあなたに言っていた人です。会ってもらえれば分かる」
「何がよ」
汐吉は言うのを迷うかのように口をつぐんだが、やがて開いた。
「……彼が嘘つきであることと、あなたが、ウラガミ様だってこと」
瑞樹は驚いたようで瞬きもしない。だが、すぐに真顔に――敵を見据えるような鋭い目つきになる。
「……私は馬鹿じゃないから、喰代さんの言っていることが嘘かどうかくらい分かるわ。ダウトね」
「本当だ。少なくとも、ウラガミ様だという点では」
「違うわ。私はウラガミ様じゃない。ただの編集者!」
「落ち着いてください」
声をあらげる彼女に、真菅が冷静な声音で語りかける。若い紅乃と若葉は、ただ見守るしかできず、真菅くらいしかこうして二人の間に入っていけない。
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