第九章 四.

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「汐吉のいうとおり、松浪さんに会ってください」 「でも」 「大丈夫、彼女は優しいから、すぐに話も合うはずだ。嘘か本当かは、話してから判断してもらえればいいですから」  警視正である真菅に言われてしまえば、うなずくしかない。 「仮に、喰代さんのいうことが嘘だったとしたら?」 「……汐吉は嘘は言わない」 「あっそ。……まあいいわ、なら会ってあげるわよ。そのマツナミサンとやらに」  瑞樹の態度がふてぶてしいものになる。大人らしからぬ言動に、真菅は内心苦笑いを浮かべながら汐吉のほうを向いた。 「あとは任せていいんだな」 「ああ。松浪さんに連絡する。明坂さん、名刺か何かありますか」 「ええ、あるわよ」  素直にうなずき、ジャケットの内ポケットから名刺入れを出すと一枚取り出し、ずいっと彼の眼前に出した。 「明坂瑞樹、今いる雑誌、ライフエンタの編集長ポジションを狙ってるわ。どーぞヨロシク」
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