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そう話す二人の横を通り抜け、若葉がここに来て初めて声を出す。
「汐吉さん、汐吉さん」
「なんだよ」
「ぼく、松浪さんと鹿占さんの家に住まないかって話になったって、いいましたよね」
「ああ、そうだな」
亜子と天芽が搬送されたこの病院に向かう途中、沙雪からそういう提案をされたのだと言っていた。
「よかったら、そのときに話してみますよ。あの人のこと。そうしたら、話がスムーズに進むかも」
「そうだな。実は、電話するのあまり好きじゃないから助かる」
「はい。あ、でも、最終的には電話で確認すると思いますよ」
「それはそれでいい。あと、アドバイスがひとつ」
「はい?」
「鹿占蒼早っていう名前の奴は、名字で呼ぶと何されるか分からないから、蒼早って名前で呼んだ方がいい。俺も初対面のとき、名字で呼ぶなって言われた」
「わ、分かりました」
コクコク、とうなずく若葉がまるで弟のように思えてきた汐吉は、やっと表情をゆるめる。
少しずつ、確実に。ヒナゲシ会の仲間は増えていっている。
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