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第十章 一.
「いらっしゃい、藤枝さん!」
「お、お邪魔します」
病院で汐吉らと解散した若葉は、一度自宅へ戻って最低限の荷物を持ってから、“ヒナゲシ邸”へとやってきた。その名前をつけたのは汐吉だ。
――『たぶん、今後はあそこがヒナゲシ会の拠点になると思うから』
そう彼は言っていたが、おそらく正しいだろう。
若葉を出迎えた沙雪は、彼が持っていた大きい荷物をよいしょと持ちあげる。
「松浪さん、いいですよ。重たいですから」
「これくらい大丈夫よ。こっちに来て、蒼早くんもいるから」
沙雪はニコニコしながら一歩先を歩き、部屋まで案内する。
「蒼早くんと二人暮らしだったんだけどねえ、仲間が増えて嬉しいわぁ」
「……仲間……」
「そうよ。ヒナゲシ会の仲間! それに、蒼早くんはゲーム好きなんだけど、私はへたくそでねぇ。よかったら、相手してあげてくれないかしら。もちろん、暇なときに。さ、こっちよ。どうぞ」
いつもよりペラペラしゃべりながら、リビングにあたるいつもの和室に若葉を案内する。そこでは、すでに蒼早がゲームに興じていた。
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