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「たぶん、父は、ぼくがちゃんと会話をしたから、それで本気だと分かってくれたんだと思います。このギターだって、ぼくが欲しいって言ったから買ってくれたものなので」
今日、若葉は、いつも背にしているギターを持ってきていた。床に寝かせるようにおいていたそれを、そっとなぞる。
「ぼく、これまでみたいに、亀戸天神社に歌を歌いに行きたいんですけど、いいですか?休学するのも、やめようと思っていて」
「……もちろん、賛成よ。ね、蒼早くん」
「うん。そういえば、君の歌、聞いたことないんだよね。今日あたり、どう?」
「えっ……、……ギターをさわるの久しぶりなんですけど……」
「一曲、ワンコーラスだけでいいから」
「私もききたーい!」
すすす、と蒼早のほうに沙雪が移動する。自然と、二人を観客にする形になり、若葉の表情は驚いた表情からすぐに微笑みへと変わった。
「……分かりました。つたないですけど、聞いてください」
ギターをケースから取り出すと、立ち上がる。その晩、ヒナゲシ邸では若葉の久しぶりの――沙雪と蒼早のためだけのライブが開催された。
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