第一章 一.

2/2

85人が本棚に入れています
本棚に追加
/345ページ
 “死気”こそ、ウラガミ様が相手にする敵のようなものである。寄生虫のように人間の体内に入り込み、やがて死に至らしめる非現実ながら威力の大きな“妖”として認知されている。 「じゃあ、水品さんと会ってくるから……、蒼早くん、私たち以外のウラガミ様について調べておいてくれる? 特にあの人が言ってた喰代(ほおじろ)さんについて」 「気が向いたらね」 「……まあいいか。うん、それで。ええと、電車の時間は、っと……」  彼女はあわただしそうに鞄に地図をつっこみ、携帯の画面を見ながら立ち上がる。部屋から出ていくのを確認して、蒼早はポケットから紙きれを取り出した。彼自身の名刺だ。 「警視庁、(あやかし)対策課……。……あと八人集めないと、か」  ふぅ、とため息をつく。ヒナゲシ会は、いわば有志の集まりであり、そこに権力は絡まない。はずなのだが、“死気”によるものと思われる事件―殺人事件や暴行事件など―が多発しており、証拠を見つけるのが難しいそれに対処するべく、新設された“妖対策課”にヒナゲシ会の面々が参加することになった。 「……ま、僕と沙雪だけじゃ、解決はできないもんね。はやいとこ“浄化”の能力を持つウラガミ様を見つけないと」  自身の名が印刷された名刺を片手に、微笑んだ。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加