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「浄化の能力を使えるというのもありますが……あなたのお父さんは、警察官だったでしょう? ウラガミ様にはそういう正義感の強い人がなりやすいので、きっと、お父さんがそうだったに違いないんです。なので、汐吉さんに能力が継がれていると思いまして」
「……ふざけるな」
「はい?」
ガタン、と大きな音を立てて汐吉が立ち上がる。紅乃と亜子は何事かと視線を汐吉らのほうへ向けた。侑斗はイヤホンをしているせいか、場の空気の変化に気付くことなく、ノートパソコンに文字を入力している。
「能力なんか継いでいない! さっきのはたまたま、きっとアンタの能力が形を変えて発動かなんかしただけだ!」
「お、落ち着いてください、私は別に」
「親父は!!」
あわてながらもなだめようとする沙雪の言葉を切り裂くように、汐吉の怒号が響く。
「親父はそんなんじゃなかった! 立派な警察官だったんだよ!」
――『当の本人は体の制御ができず別人格になってしまい、最悪の場合は殺人をもしてしまう』
沙雪の言ったことが、汐吉の脳内に蘇る。父親は、立派な警察官だった。汐吉はそう信じているし、信じたい。だから、父親の最期があんな形でないことをずっと願っていたし記憶を塗り替えようともしていた。
――『……めろ、やめろよ』
――思い出したくもない、記憶。悪夢となって、最悪の過去を見せる。
――『親父、やめろって、なんで、お袋をっ』
なあ、親父。そうだよな。立派な警察官だったんだよな。俺とお袋を養うために、ノンキャリアでも、出世が期待できなくても、がんばっていたんだよな?
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