第十章 二.

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「でも、不思議よね。私、二俣さんに特集組みたいなんて頼んでないけど……」  汐吉から聞いた話によれば、なぜか自分が瑞樹に天芽の特集を組みたいと依頼したことになっている。初めて聞いたとき沙雪は、ぽかん、と文字通りあっけにとられた。 「名刺は渡したけど、それっきりなのよ。何にも話してないの。本当に」 「分かってますから。それを、明日、明坂さんに話してほしいんです。二俣くんのことを信じてるようなので」 「……話すのはいいけれど、わかってくれるかしら。結構怒ってたんでしょう?」 「まあ……、二俣くんへの信頼度の方が上なんでしょう。俺よりも」  彼女からしてみれば、つい先ほど顔を合わせただけの汐吉と、何回か仕事を一緒にした侑斗とならば後者をとる、というだけの話だ。彼とて、そのことは分かっていた。 「そういえば、今日退院なんだっけ? 和氣さんが付き添ってるのよね」 「……俺は、来いとは言われてないので行ってませんが……、無事に終わってるだろうか」 「そんなに大変だったの?」 「日曜日は、まあ」 言葉を濁すような言い方だが、彼女はそれ以上聞こうとせず、ふーん、と一言もらしてストローに口をつけた。 ***
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