第十章 二.

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 ところかわり、病院の前、明坂瑞樹。彼女は途方にくれたようにバス停のベンチに座っていた。 「あれっ、明坂さん……でしたっけ」  通りがかったのは、和氣紅乃だ。現在は午後五時、退院は午前中に終わっており、亜子と別れた彼女は帰り道で通っただけだった。 「あら、どうもぉ……ふへ」 「ど、どうしちゃったんです?」  心配した紅乃が小走りで駆けよる。瑞樹は力なく、首を横にふった。 「なんでもないのよぉ」 「でも、そうは見えませんよ。今日はもう駅直通のバス終わっちゃいましたから、あっちのバス停なら、まだ……」 「ただぁ」 「……ただ?」
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