第十章 二.

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「……和氣さん、ハ、シオキチのダイジなヒト……」 「え?」  よく聞き取れず、瑞樹の口元に耳を近づける。次の瞬間、首に瑞樹がかみついた。 「なっ、っ!」  驚いた紅乃が飛びのくように後ずさる。首の後ろがジンジンする。何かに叩かれたような痛み。噛まれたのに、ここまであとをひく痛さとは? 「あ、明坂さん、なん……」 「オイデ」 「や……、あっ」  拒否しようとしているのに、体が動く。足はゆっくりと、瑞樹のほうへ近寄る。そして、彼女が手を掴んだ。 「つかまえた」 「え……?」  どういうこと?  そう聞こうとしたが、紅乃が瑞樹を見たのはその光景が最後だった。
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