第十章 三.

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「しっかし、本当に広いよなぁ、ここ」  ざりざりと砂の道を歩きながら呟く。玄関の前につき、再びインターホンを鳴らす。バタバタという足音がしたかと思えば、ガラッと勢いよく引き戸が開いた。 「ごめんなさい、待たせちゃって!」  沙雪が勢いよく飛び出してきたことに驚き、若干、引き気味にうなずく。 「いや、別に……、どうしたんだ?」 「喰代さんより先に来てくれた人がいてね、話しこんじゃってて、なんにも準備ができてないのよ」  チラ、と視線を下にやると、黒いスニーカーがある。 ―……この靴、どこかで見たな。 「あ。布瀬さん?」 「ええ、そう。よく分かったわね」 「この靴、前に見たな、と思って」  快次の家へ、沙雪と蒼早、汐吉の三人で行った―おしかけた―際に、自身の靴を置いた時、横にあったのがそれだった。 「電話したら、仕事は休みだって言うから来てもらったの。さ、部屋で蒼早くんと布瀬さんが待ってるわ」  靴を脱いだ汐吉は彼女の後をついて部屋に入った。
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