85人が本棚に入れています
本棚に追加
第十章 四.
「これで全員ね。あ、藤枝さんは大学よ」
「ああ。松浪さんと、蒼早、そして布瀬さんか」
「どうもっす」
勧誘に行ったあの日以来だった。服装は相変わらずシャツにジーパンというラフなものである。
「真菅さんから連絡があったのは昨日の夜。門前仲町で、殺人事件が起きました。蒼早くん、地図広げて」
「はいはい」
沙雪にいわれ、大きな机の上に、これまた大きな地図を広げる。
「こういうの憧れてたのよ!」
少し前まで、こんなふうに明るく、いや嬉しそうな彼女が見れるとは思っていなかった。いつも蒼早の空気読まない発言の尻ぬぐいをしたり、慌てたり。汐吉がヒナゲシ会に入るといったら騒いだあの日以来だった。
それを知っている汐吉は、何があったのかと怪しむように目を細めて彼女を見る。
「……沙雪、最近家に居ることが多いから、昼に再放送される刑事ドラマにはまっちゃって」
「あー、なるほど」
蒼早のため息まじりの説明に納得した。
最初のコメントを投稿しよう!