第十章 四.

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「でも、違うと思うの。統率っていうくらいだから、全能力を扱えるんじゃないかしら。もしくは、それに似たことができるとか」 「ああ……そういう意味では違うか。拘束、だし」 「そうそう。とはいえ、私の苦労を布瀬さんは分かってくれててよかった!」  思わず快次の両手をガシッと沙雪がこれも両手で掴む。快次はきょとん、としているが、汐吉の視界を勢いよく蒼早の腕が横切った。 「沙雪、そういうのいいから」 「え? ちょ、ちょっと、蒼早くん」 「いいから、離しなよ」  蒼早は貧弱、いや、他の同年代に比べれば力はない。だからか、いつもより力を込めて沙雪の手を離そうと無理やり指をねじこむ。 「ちょっ、アオサさん、タンマっす!」 「うるさい」 「痛いんすって」 「じゃあ布瀬が離せばいいだろ!」 「アオサさんの指が絡まって、あぁっ」 「もう、分かったわよ、離す、離すから!」  三人がそうやってじゃれあっているのを、汐吉は冷めた目で見ていた。 ―こうやって話が止まるんだよなあ。
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