第十一章 二.

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「亀戸天神社に行って、藤枝さんに会った時のこと、覚えていますか?」 「ああ。松ヶ枝さん、だったか、が死気に憑かれていたな」 「はい。布瀬さんにもその話はしていますよね」 「聞いたっす」 「私がへましてしまった時のことなんですけど、松ヶ枝さんが言ったんです。“ウラガミ”って、はっきりと」  その意味が分かる蒼早は、眉をひそめた。汐吉と快次は互いの顔を見て、首をかしげる。 「それのどこが……」 「死気がウラガミを認識している。ということ?」 「その通りよ、蒼早くん」  松ヶ枝に憑いてしまった死気を浄化しようとしたとき、彼は確かに言っていた。 ――『グ、ガ、ウラガ、ミ、ナン、デッ』  そもそも、死気というのは“妖”ではあるが、“病気”でもある。言葉はおろか、話すということもないはずだった。少なくとも、沙雪は先代の母から、そのような事例があったとは聞いていない。  だからこそ、あの時は思わず考え込んでしまった、というわけだが。
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