第十一章 二.

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「普通は言語なんて話さないはずなのに、憑いた相手にしゃべらせている……。死気が正真正銘の“妖”であることを証明しているわ」 「ということは、これまでの死気はそうでもなかった、ってことか?」 「そうよ。喰代さんが浄化してくれた水品さん、覚えてる?」 「ああ」  忘れるわけがない。汐吉がウラガミであることを明確にさせたあの一件だ。 「本来は、彼女のように……うめき声をあげるだけなのよ。意味をもたない言葉っていうのかしら、そういうものをね。でも、だんだん変わってきてる……」 「つまり?」 「急に変わったってことは、少なからず原因があるはず。だから、さっきの提案はあながち間違ってないと思うの。しらみつぶしに探すよりは、効果的じゃないかしら」 「そう言われると、確かに」  ウラガミがまだ見つかっていない神社へ行ってみることは、的外れとまではいえないように思えてきた。 「どう、布瀬さん。分かる?」 「うーんと……、姉御の考えが合ってるってことは分かったっす」 「そ、そう?」  相変わらず姉御、と呼ばれることもあり、苦笑いしながらうなずく。 「布瀬、実はあんまり理解してないでしょ?」 「アオサさんは分かるんすか? 天才っすね!」 「違うよ、布瀬が――……理解しきれてないだけ」  さすがに、馬鹿とは言えないようで、遠回しにそういう。
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