第十一章 二.

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「よし、じゃあこれで方向は決まったってことでいいかしら?」  沙雪が周りに問えば、皆がこくりとうなずく。 「じゃあ、さっき分けたメンバーで……喰代さんと布瀬さんは港区をお願いしていいですか?」 「……え? 松浪さんたちのほうがいいんじゃないか? 芝大神宮のウラガミなら、土地勘もあるだろう」 「それはもっともなんですが、私たちは人数が多いですし。ほら、港区は二ヶ所なので」  たとえ、沙雪チームのほうが人数が多いとはいっても、二ヶ所ならば二人でも行くことができる。対して、文京区や千代田区は三つ。一日で三人が行けるかというと、難しいところだ。若葉は大学があるし、沙雪だって仕事がある。  むろん、それは汐吉と快次にもいえることだが、汐吉の店は午後からだし週末は店もない。快次の休みが重なれば、一日で行くことは可能だろう。 「……そういうなら、俺はいい。布瀬さんは?」 「いいっすよ。といっても、この一ヶ月はもうシフト決まってるんすけど」 「いいよ、俺があわせるから。あとで教えてくれ」 「うっす」  素直に汐吉に対してうなずく。沙雪には、ご主人様と犬のような関係性に見えていた。
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