第十一章 二.

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 ううむ、と汐吉は両腕を組む。他の人から見れば、紛れもなく、ナンパだ。スカウトというと多少聞こえはよくなるが、そういったところで聞いてくれるかどうか。  ナンパならなおさら、自分がそう声かけをしているのを想像すると、我ながらあり得ないと思ってしまう。 「……ん? ヒナゲシ会って名刺あるんだったか?」 「……あ。そうよ、それがあるじゃない!」  ポン、と左の手のひらで右手のこぶしをついた沙雪が意気揚々と引き出しに向かう。が、そこをあけた彼女はすぐにまた地面にはいつくばるような低い声を出してうなだれた。 「あー、しまった……」 「なんだよ」 「ヒナゲシ会の名刺、あるにはあるけど、このドタバタですっかり発注しないといけないのを忘れていたのよ。私と蒼早くんのしかないわ」  当初は二人しかいなかったのだから、当然といえば当然だった。しかも、さほど枚数も多くはない。
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