第十一章 二.

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「あら、どうして? だって名刺を持ってるのは私か蒼早くんなのよ。一チームに一人いたら安心じゃない」  ニコニコと笑顔で説明された快次は言葉につまってしまう。こんな時に若葉がいてくれたら、場をそれなりに和ませてまとめてくれるかもしれないが、不在だ。 「でも、姉御、アオサさんはたぶん……兄貴とあわないっすよ。オレのほうが兄貴と話せるっす」 「そうなの?」  彼女に尋ねられた蒼早は、数秒黙ったのち、口を開いた。 「……いいや、そんなことないよ」 「え、アオサさん……」 「布瀬、沙雪と藤枝をよろしく」 「えっ、あの」 「それでいいでしょ? 沙雪」 「ええ! さっすが蒼早くん、物分かりが早くて助かるわぁ」  顔の近くで両の手のひらを重ねて嬉しそうにすり合わせる。
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