第一章 四.

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 汐吉は、疲れたといわんばかりに椅子に座ってしまった。 「店長……珍しいですね、あんな大声」 「……すまない」  紅乃がどう言葉をかけようか迷っていると、亜子が話題をかえるかのように声をかけた。 「紅乃ちゃん、私も帰るからレジお願いしていい?」 「あ、うん! 今すぐ!」  そして、ふと気がつけば、イヤホンをとった侑斗が近くまで来ていた。汐吉と侑斗は顔を見合わせる。先に視線をそらしたのは、汐吉だった。 「店長さん、大丈夫?」 「……ああ。うるさくしてすまないね、二俣くん」 「紅茶、おかわりお願いします。四杯目」 「……そう」  珍しく注文するでもないのにイヤホンを取っているため、苦情をいわれるのかと思えば、やはり注文らしい。
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