第十一章 三.

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 互いの月収や年収といった生々しい話はまだしていない。それでも、なんとなく、どの程度かは互いに感じていた。 「でも、オレはやりがいのある仕事ができてるんで」 「……そうだな」  複雑な家庭環境と引き換えにお金という誰もが欲しがるものを持てる場合と、お金や生活環境はありきたりでも生きようと思える日々が過ごせるのと、どちらがいいのか。  それは人によって答えが異なるものであることを、彼らは理解している。 「アオサさんも大変っすよね。いくら家から出たとはいっても、何かあったら、オヤジさんに怒られるんすから」 「今のところ、何もないがな。ある程度まではほっておくはずだ」 「……全部計算してるんすか?」 「ん? いや。それは蒼早の方だろうな。どこまでやれば文句を言われないか……、一番わかっているのはあいつだ」  ゲームばかりして好きなように生活しているように思える彼だが、沙雪のことをよく見ているし、若葉ともうまくやれている……いや、やれそうなところを見ると、実はなかなかにハイスペックな気がしてきた。
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