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「汐吉サンて、方向音痴なんすねー」
快次がへらへら笑いながら話す。快次は、東京駅からも帰れるからと汐吉にあわせてくれることになった。東京駅へ歩いて向かう。
「意外そうに言うな。電車なんてめったに乗らないから」
「ということは、タクシー移動っすか? リッチだ」
「逆だよ。引きこもりだから」
「普段どうやって生活してんすか……」
「ネット通販と紅乃」
「こうの……?」
ボタン一つで買い物ができるネット通販は、汐吉のように引きこもりしたい人にとって最高のサービスだ。それとは別に、聞きなれない三文字に快次は不思議そうな表情をする。
「喫茶店やってるって言ったろ。従業員の名前だ。和氣紅乃。女子大生」
「へえ。アルバイトを雇ってるんすね」
「最低賃金すれすれだよ。常連客のおかげでなんとかもってるところもある」
新規客の開拓をしようともしていないのだから、当たり前といえば当たり前である。
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