第十一章 三.

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「そういや、今日の午後……っていうか夜に、松浪さんと明坂さんが会うんだよなぁ」 「修羅場になりそう……」 「あー、まあな。紅乃がいてくれりゃ、なんとかなるとは思うけど……」  人懐っこく明るい彼女だ。もし、沙雪と瑞樹の話し合いが、言い争いになってしまっても、緩衝材となってくれそうである。  汐吉でも、できないことはないが、大声を出せば以前のように彼自身が興奮してしまう可能性もある。 「……布瀬さんは、携帯持ってる?」 「え? はい。超安いプランでがんばってるっす」 「そうか。……俺は固定電話があるから、いらないと思って持ってないんだけど、やっぱりある方がいいか?」 「そっすねえ。オレは、逆に固定電話がないから、携帯ないと連絡手段ないんで」 「あー、なるほど。じゃあ使う目的は電話だけ?」 「なんか携帯ショップの店員みたいなこと聞いてくるんすね」  苦笑いしながら彼が言う。そのまま、ポケットから取り出した携帯を汐吉に渡した。 「よかったら見てもいいっすよ」 「おお、ありがとう」
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