第十一章 四.

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「……アケサカさん、っすか。二つ買ってどうするんすか?」 「は? なんで私の名前知ってるの?」 「ああ、えっと、この人はヒナゲシ会のメンバー候補、布瀬快次さんだ。明坂さんのことは、みんなに話してあるから、それで」 「へぇー、そう。人のことべらべら話すのね」  あからさまに不機嫌そうに眉をしかめる。先ほどの快次の質問には答えたくないようで、ぷいっと顔をそらしてしまった。 「じゃ、私は用事があるから」 「あ、明坂さん。今日、カンテラに来ること忘れてませんよね?」  すれ違いざまに瑞樹の背中へ声をかけると、彼女は足を止めた。ゆっくり彼らのほうを振り返る。 「……何それ? 覚えてなぁい」 「いや、でも、日曜日に……」 「覚えてないったら覚えてないの。ウザイ、いい加減にして」  フン、と鼻息を鳴らすようにして、彼女はくるりと向きを戻してまた歩いていってしまう。
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