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第十二章 一.
カツカツ、ヒール靴が地面を叩く音がよく聞こえる。
「二俣くーん、買ってきましたよぉ。携帯」
「おつかれ」
侑斗は椅子に座ったまま、ぐるりと瑞樹のほうを向いて笑む。
彼女から紙袋を受け取り、中に入っていた箱を出しながら尋ねた。
「さて、なかなかこのお姫様は起きないんだけど、どうしたらいいと思う?」
横にある黒く長方形をしたソファに横たわっている女性――紅乃を視線で示す。
「えー、どうでしょう。顔、殴っちゃえば?」
「あはは、だめだよ。女の子なんだからさ」
「あ、そっか。じゃあお腹とか?」
「そんなに殴りたいのかい? そうしたいならいいよ」
「やったぁ。さっき、喰代さんに会っちゃって機嫌悪いのよ。やっちゃおー」
意気揚々と彼女に近づく瑞樹だったが、侑斗がその腕を掴んだ。
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