第十二章 一.

3/5
前へ
/345ページ
次へ
「ああ、先ほどの方も私が対応しましたよ。確かに二台、買っていかれました」  カウンターで、汐吉と快次の対応をしてくれている青年が丁寧かつ爽やかに答える。快次の顔見知りである彼がたまたまいたことで、瑞樹のことを聞いてみることにしたのだった。 「布瀬さんが持ってる分の次のモデルですね」 「そうなんすね」 「その、どうして二台買うのかってことは、言ってました?」 「いえ。二台持ちされる方はよくいらっしゃいますし、私からは尋ねていません。ああ、でも用途は会社って言ってましたよ」 「会社……」  おかしい。汐吉はすぐにそう考えた。  汐吉がその理由で二台買うのはおかしくない。対して、瑞樹は会社員だ。会社員が、携帯を二台買うものかどうか。 ―上司に指示されて、とかなら領収書は会社名義か……いや、個人名でも一応は経費になるのか。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加