第十二章 二.

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「出なかったの?」 「ああ、電話に出ることはできないって」 「……そう。私も電話してみるわ」  もしかしたらタイミングが悪かっただけかもしれない。  もう一度かけなおそうとした汐吉に、待って、といって今度は沙雪が電話をかけてみる。 「……あ、もしもし?」 『ただいま、電源が入っていないため、電話に出ることができません』 「あー……、ダメね」  仕方ない。通話を切りながら沙雪がぼやく。 「やっぱりか」 「電源が入ってないって」 「……? 俺の時は、そういうガイダンス音声はなかったぞ」 「あら、そうなの? じゃあ喰代さんの電話で電池切れしちゃったのかしら」  汐吉は携帯を持っていないから分からないが、沙雪はそれを経験していた。大事な時に限って充電器を持っていない場面に居合わせることも何度か。
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