第十二章 二.

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「店の方は大丈夫だが……」 「気がかりね。明日になっても連絡取れないようなら、お家にいってみたほうがいいんじゃない?」 「いや、あいつは実家暮らしだ。帰ってこなければ親御さんが警察に相談するだろ」 「そう。……あと三十分したら帰るわ。このまま明坂さんが来ないなら、仕事片付けたいし」 「俺は今すぐでもいいけど」 「一応、一時間半待ったっていう実績を作っておかないとね。レシート、時間も印刷されるでしょ?」 「なるほどな」  後々、待っていたのに来なかったという話になったときに、瑞樹に突きつけるつもりなのだろう。  だが、あと三十分。沙雪と何を話そうか。 「……そういえば、松浪さん、刑事ドラマにハマってるんだって?」 「蒼早くんから聞いたの? そうなのよ、週に一日か二日はお休みでね、家にいるんだけど。面白いの見つけちゃって! 主人公がね、かっこいいのよ。どんな筋トレしたらこんな筋肉つくの? っていうボディで。あ、男性なんだけど、相棒が女性なのよ! その女性は、そうね、和氣さんに似ていてかわいらしい雰囲気よ、このギャップがいいのよねぇ。それでね」  沙雪が饒舌になり、嬉しそうに目を細める。  この話題は、三十分程度では終わりそうにないな、と話題をふったことを早くも後悔した。
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