第十二章 三.

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「なんだ、蒼早か」 ―……蒼早?  朝が苦手なはずの彼がなぜこの時間に、と思ったところで、気が付く。もう十一時を回っている。朝、と呼ぶには遅い時間帯だ。起きていても不思議ではない。 『真菅じゃなくて悪いね』 「その様子だと、松浪さんから聞いたか?」 『ああ。昨日帰ってきたときは、君と刑事ドラマの話ができたといって、ずいぶんご機嫌だったよ』 「それは何より」  その代償が、二時間ほどの刑事ドラマ談義だ。もちろん、二時間のうち汐吉がしゃべったのは五分程度。ほぼ、沙雪がしゃべり倒した。  ドリンクだけでなく、フードも注文してくれたため、彼も適当な理由をつけて追い出さなかったのだが。沙雪でなければ何とかして追い出していただろう。 『沙雪は仕事があるから僕が電話したのだけど。臨時休業、本当にするの?』 「それも聞いたんだな。明日にする予定だ。俺もいい年なんでね」
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