第十二章 三.

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『まだ二十八なのに何言ってるのさ。まあいい。実は、藤枝から気になることを聞いた』 「……若葉から?」 『ああ。彼は大学に行ったけど、今日は昼で終わるらしい。カンテラは五時からだったよね。一、二時間ほど時間作れない?』  つまるところ、今から来い、ということだ。正直、面倒くさい。寝起きの今は、その感情のほうが勝ってしまった。 「時間は作れるが行くのは無理だ。電話でいいだろう」 『……分かったよ、じゃあ僕と若葉でそっちに行く。開店前だろうがおかまいなしにね』 「そこまでして話ってなんだよ、さっきの若葉から聞いたことっていうのも知りたいし」 『藤枝が、死気を見たというんだ』 「……どこで」 『港区。氷川神社の近く。土曜日に行こうとしていたところのひとつだ』  受話器を持ったまま、二階にあがる。自分の鞄の中にある手帳を引っ張り出した。  快次との会話を思い出してのことだった。確かに、首都圏の路線図がのっている。地図でないにしろ、ないよりはいいように思えた。
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