第十二章 三.

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『死気のほうさ。藤枝は教授が運転する車の中、死気が憑いている人は歩いていた。だから一瞬。でも見間違いじゃないと言っていた』 「見間違いじゃないのは、どうして……」 『目が合った。そのときに、その人の首元から黒い煙が出ているのを見たって言っていた。死気はすぐに消えたらしい』  だが、汐吉が“浄化”をしていないのに消えるわけがない。一時的に見えなくなっただけにすぎない。 「事情はだいたい分かった。何時頃来るんだ?」 『藤枝が帰ってきて、昼食にしてから行くから……早くて二時かな。三時頃のほうがいい?』 「そうだな……三時に来てくれたら、何かお菓子も用意しておく」 『へえ、気が利くね。そうしようか』 「ああ。他は?」 『いいや、ないよ。用件は終わりだ、またあとで』 「はいはい。じゃあな」  ふう、と息をつきながら電話を切る。そして、再びスケジュール帳にある路線図を見た。 「氷川神社……。少し調べておくか」  携帯はないが、パソコンはある。月に一度はさわる、あれ。食事を終えたら調べることにし、受話器をもとの場所に戻すと、朝食兼昼食の準備をはじめた。
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