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えへ、と苦笑いを浮かべながら謝る彼女の額に、侑斗が指先を伸ばす。
「大丈夫だよ。今は休憩だから」
「きゅうけい?」
どういうことか、と尋ねる前に、額にあてられた指先が肌色から黒いものをはらんだ色に濁る。
「……ずーっと、死気で満たすのにも時間がかかるからさ。僕の、休憩時間」
つ、と指先を離すと、紅乃の目は灰色がちなものになる。
「第三段階、目の色の変化。いいね、あと少し。和氣紅乃さん、分かる?」
「分かりますよお、ユウトさん」
「和氣さんのお家には、僕から急遽ゼミ合宿に行くことになった、って連絡入れておいたから。一週間くらいは家に戻らなくて大丈夫」
「助かりますー。大学もめんどくさかったし、サボれてラッキー」
にこ、と笑う。その笑顔は機械じみており、口は弧を描いているが目に温度はない。
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