第二章 一.

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 門田を止められていれば、父親を呼ばなければ、少なくとも両親は死んでいなかった。この“カンテラ”も存在していなかった。 「チッ……トラウマはいつまでもトラウマだ」  手を見るのをやめた彼は、暗闇に逃げるように、布団を頭まですっぽりかぶった。つい三日前に天日干しをしたばかりなのもあって、いい匂いがする。  なんとなく、母親が洗濯ものを干す光景が脳裏に浮かんだ。そして、父親が自分より早起きして朝食にしている光景も。 「……明日、真菅に文句を言ってやる」 ―あの人が、俺を松浪という女にいわなければ今日は安眠だったはずなんだ。
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