第十三章 三.

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「……どこにもいねえな」 「見れば分かると思ったんだけどね」  若葉のいう男性は、今日は通らないかもしれない。  道行く人を、蒼早と一緒に不自然に見えないように気を付けつつ目を配っていた。しかし、一向にその男性が通る気配はない。 「……昼飯にするか」 「え、もう?」 「どうせ十二時はピークで混む。前後どっちかにずらしたほうが快適だ」  そう言って方向転換をしようとした汐吉に、ちょうど歩いてきた男性がぶつかった。 「わ、っと、すまない」 「いえ、こちらこそ」  カシャン。  地面に何かが落ちる音がする。汐吉がとっさに拾おうとすると、ぶつかった彼がさっと自身で拾い上げ、カチャ、と装着した。
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