第十三章 三.

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「最近よく落ちるようになっちゃって」  照れたように笑う彼は、オレンジの眼鏡をかけている。 「あ」 「え?」  オレンジの眼鏡、あとは赤いピアスがあれば。ちょうど左耳が見える。目をやると、そこには赤いピアスがあった。 ――きっと、この人が。  しかし、死気が憑いているようには見えない。あの黒いものは見えなかった。 「えーと……」 「どこかで会ったっけ? いや~、これでも人の顔覚えるの得意な方なんだけど」 「いや、初対面です」 「アハ、やっぱり?」  笑う彼は、間違いなく、探していた人だ。金髪、オレンジ色の眼鏡、赤いピアス。
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