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第十三章 四.
汐吉たちと別れた大吉暁――暁は、品川神社の西南、新馬場駅近くにあるビルへと向かった。電車を降り、下りのエスカレーターで地上に降り立つと、軽い足取りで向かう。
「ん?」
目に黒いものが映った気がして、一度立ち止まる。眼鏡をとってみてみるが、ホコリのような汚れが少しついているだけで、黒いものはなく、自分の両目をこすってみるが何もない。
「気のせいか」
遅れる前に、と眼鏡をかけなおすと、もう一度歩きはじめる。
人通りの多い道から右に曲がれば、少し影が落ちる道に入る。そして、三階建てのビルへと入っていった。
カツカツ、二十歳が履くには高級そうな革靴で足音を鳴らし、あるドアの前に立つとコンコンとノックした。
「二俣さん、大吉でぇーす」
「ああ、大吉くんか。入っていいよ」
「はーい」
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