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第十四章 二.
ちょうど一区切りついたところで、真菅はふぅと息をつく。そこへタイミングよく鳴る着信音。真菅は立ち上がると窓際へ向かいながら、ポケットに入れていた携帯を取り出した。
「……鹿占?」
ディスプレイに表示されているのは“鹿占蒼早”という文字。珍しいな、と思いつつとりあえず電話に出ることにした。
「はい、真菅」
『もしもし? 俺だ、喰代』
「ああ、汐吉か。どうしたんだ」
声の主は汐吉で、蒼早が電話をかしたようだった。そういえば、汐吉は携帯を持っていなかったな、と思った真菅は、同時に彼らがカンテラではない場所にいることを無意識に理解していた。
窓際に立つと、ガラスの向こうを見渡す。下は車が行き交い、小さく人が歩く姿も見える。何ら変わらない一日だ。
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